資源・エネルギー安全保障・GX分野では、太陽光発電、蓄電池、水素関連設備、電力変換装置、エネルギーマネジメントシステムなど、多くの電子機器が使用されます。これらの機器では、一般的な民生品とは異なり、高電圧・大電流への対応や屋外環境での長期稼働、高い電力変換効率が求められます。
また、エネルギーインフラは一度導入すると長期間使用されるケースが多く、製品そのものの品質だけでなく、部品の長期供給や保守、サプライチェーン全体での脱炭素への対応も重要です。
そこで活用されるのが、電子機器の設計支援から部品調達、基板実装、装置組立、検査までを受託するEMS(電子機器受託製造サービス)です。ここでは、資源・エネルギー安全保障・GX関連機器におけるEMSの役割や製造委託先の選び方、次世代太陽電池や蓄電池システムを支える製造技術について詳しく解説します。
資源・エネルギー安全保障・GX分野では、再生可能エネルギーの導入拡大や電力需要の増加に対応するため、発電設備だけでなく、電力を変換・蓄電・制御する電子機器の重要性が高まっています。
例えば、太陽光発電ではパワーコンディショナ、蓄電池システムではBMS(バッテリーマネジメントシステム)やPCS、エネルギーマネジメントでは各種センサーや通信装置などが必要です。
2025年に閣議決定された「GX2040ビジョン」と第7次エネルギー基本計画でも、エネルギー安全保障を確保しながら、再生可能エネルギーや原子力などの脱炭素電源を最大限活用していく方針が示されています。
こうした機器の製造には、高電圧・大電流回路、パワー半導体、放熱設計、高信頼性実装などの専門技術が必要です。EMSを活用することで、エネルギー関連企業は自社のシステム開発やエネルギー制御技術にリソースを集中しながら、電子機器部分の量産体制を確保できます。
一般的な民生用電子機器では、比較的低い電圧・電流で動作する製品が多く、主に屋内環境での利用を前提として設計されます。
一方、太陽光発電用PCS、蓄電池システム、EV充電設備、産業用電源などのGX関連機器では、高電圧・大電流を安全かつ高効率に制御するパワーエレクトロニクス技術が必要です。
大電流が流れる基板では、配線抵抗による発熱を抑えるため、厚銅基板や大型バスバーなどが使用される場合があります。また、SiCやGaNなどの次世代パワー半導体を活用する製品では、高速スイッチングに伴うノイズや熱の管理も重要になります。
さらに、屋外設置される製品では、高温・低温、湿度、雨水、粉じんなどへの耐性も必要です。そのため、GX関連機器では、電気的な安全性・熱設計・耐環境性を同時に考慮した製造が求められます。
エネルギー関連機器では、高電圧回路、制御基板、通信回路など複数の技術を組み合わせる必要があり、自社ですべての製造設備と専門人材を用意すると大きな投資負担が発生します。
パワーエレクトロニクス製品の製造経験を持つEMSを活用すれば、部品調達から基板実装、装置組立、検査までを一貫して外部へ委託することが可能です。
また、新しいエネルギー技術では、研究開発段階の試作品から実証機、量産製品へ段階的に生産数量が増えていくケースがあります。変種変量生産に対応できるEMSであれば、試作から量産まで同じ製造パートナーへ任せることで、量産移行時の手戻りを抑えやすくなります。
さらに、部品EOLの監視や代替品提案まで対応できるEMSを活用することで、長期間使用されるエネルギーインフラ機器の安定供給にもつなげることができます。
GX関連機器の製造では、一般的な電子制御基板だけでなく、高電圧・大電流を扱うパワー基板への対応が重要です。
大電流回路では、導体抵抗による発熱や電圧降下を抑えるため、厚銅基板や大型端子、バスバーなどを組み合わせた実装が必要になる場合があります。
また、SiC・GaNなどのパワー半導体を使用する製品では、部品そのものの性能だけでなく、放熱構造や基板レイアウト、絶縁距離などが製品性能と安全性を左右します。
そのためEMSを選ぶ際には、高電圧・大電流製品の実装経験があるか、パワー半導体や大型部品を安定して実装できる設備を保有しているかを確認しましょう。
さらに、太陽光発電設備や蓄電システムなど屋外で使用される製品では、コンフォーマルコーティング、防湿・防錆処理、ポッティングなど、温度・湿度・雨水・粉じんを考慮した耐環境ソリューションへの対応も重要です。
エネルギーインフラに使用される電子機器は、長期間にわたる連続稼働が求められます。製品が故障すると発電停止や設備停止につながる可能性があるため、出荷前の品質検査だけでなく、長期信頼性を考慮した評価が必要です。
基板実装では、AOI、X線、ICT、ファンクションテストなどを組み合わせ、はんだ接合や部品実装に問題がないかを多段階で確認します。
さらに、製品用途に応じて、高温・低温、温度サイクル、高湿度、振動などの環境ストレス試験を実施し、長期間の使用を想定した信頼性を評価できる体制が理想的です。
また、高価なパワーモジュールや制御基板では、不具合が発生するたびに装置全体を交換すると保守コストが増加します。そのため、故障解析や部品交換、BGAリワークなどに対応し、修理して再利用できるEMSであれば、製品ライフサイクル全体のコストを抑えやすくなります。
資源・エネルギー安全保障の観点では、完成品を製造できることだけでなく、使用する半導体・電子部品・材料を安定して確保できることも重要です。
特定地域や特定メーカーに依存したサプライチェーンでは、地政学的リスク、災害、輸出規制などによって生産が停止する可能性があります。そのため、マルチソーシング、代替部品提案、EOL監視、在庫管理などに対応できるEMSが適しています。
また、GXを進める企業では、自社工場から排出されるCO2だけでなく、原材料調達や部品製造、物流などサプライチェーン全体の排出量も重要になります。
製造をEMSへ委託した場合、その製造工程に伴う排出量は発注企業側のScope3算定に関係する可能性があります。そのため、委託先が再生可能エネルギーの導入、省エネルギー設備への更新、生産効率改善などを進めているかを確認することも重要です。
今後は価格・品質・納期だけでなく、製造段階のCO2排出量を把握し、サプライチェーン全体で削減できるEMSであるかも、GX関連企業にとって重要な選定基準になると考えられます。
GX分野では、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、太陽光発電や蓄電池関連の技術開発が進んでいます。
第7次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入する方針が示されており、次世代型太陽電池であるペロブスカイト太陽電池について2040年までに約20GWの導入を目指す方向性も掲げられています。
次世代太陽電池の普及に伴って、発電した電力を変換・制御するPCSや、発電量を監視する通信・計測機器などの需要も拡大すると考えられます。
また、再生可能エネルギーは発電量が天候に左右されるため、電力を貯蔵して需給を調整する蓄電池システムも重要です。大容量蓄電池では、多数のセルを安全に管理するBMSや、電力を変換するPCSなど、高性能な電子機器が必要になります。
こうした装置では、変換ロスを抑えてエネルギー効率を高めることが重要です。そのためEMSにも、高密度実装、パワー半導体、放熱設計、高効率な電力変換を支える製造技術が求められます。
GX関連機器は市場拡大に伴って生産量の増加が見込まれる一方、人手不足や製造コストの上昇への対応も必要です。そのため、製造工程の自動化やAI活用が重要になります。
電子機器製造では、AOIやX線検査による自動検査に加え、AIを活用した良否判定や製造データ分析などにより、品質と生産性を両立する取り組みが進んでいます。
また、生産設備から電力使用量や稼働状況のデータを収集し、AIなどを活用して分析することで、設備の待機電力削減や稼働条件の最適化など、製造工程そのものの省エネルギー化につなげることもできます。
GX2040ビジョンでは、脱炭素電力などのクリーンエネルギーとDXを活用し、付加価値を生み出すGX産業構造を構築していく方向性が示されています。
また、第7次エネルギー基本計画では、DX・GXの進展に伴う電力需要増加を見据えながら、エネルギー安全保障、経済効率性、環境適合を両立したエネルギー供給を進める方針が示されています。
そのため今後のEMSには、単にGX関連製品を製造するだけでなく、自社の製造工程でも省エネルギー・自動化・再生可能エネルギー活用を進め、製品と生産の両面からGXへ対応することが求められるでしょう。
資源・エネルギー安全保障・GX向けEMSを選ぶ際は、一般的な電子機器製造の能力だけでなく、「高電圧・大電流への対応」「屋外耐環境性」「長期信頼性」「安定したサプライチェーン」「製造工程の脱炭素化」といった要件を確認することが重要です。
特に、太陽光発電、蓄電池、水素関連設備などでは、高効率な電力変換や長期間の連続稼働が必要となるため、パワー半導体や厚銅基板などを扱える高度な製造技術が求められます。
また、GX関連企業では製品使用時の省エネルギー性能だけでなく、部品調達・製造・物流を含めたサプライチェーン全体のCO2削減も重要になります。EMSを選ぶ際にも、製造工程の省エネルギー化やCO2排出量管理への取り組みを確認しておきましょう。
高電圧基板の実装から完成品組立、品質検査、長期部品調達までを一貫して担えるEMSを活用することで、GX関連機器の開発・量産負担を抑えながら、エネルギー安全保障と脱炭素の両立に対応した製品供給体制を構築することができます。
EMSの受託製造サービスを検討中の企業向けに、業界別に製品生産を推進させるEMS受託製造会社をご紹介しています。「計測・医療・航空宇宙」「家電・住宅設備」「自動車」各業界にフィットするおすすめ3社について、選ばれる理由や規格の対応状況までまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
EMS受託製造会社を「計測・医療・航空宇宙」「家電・住宅設備」「自動車」などの業界別に徹底調査。各業界で強みを発揮し、自社製品の成長を加速させるパートナーを3社を厳選しました。
JAXA認定やISO13485の製造網で、自社ノウハウ不要で航空宇宙・医療など厳格な品質基準の市場へ安全に参入できます。
独自の全端子X線検査で高多層基板の見えない内部欠陥を精緻に検出。不良品出荷を防ぎ、重大事故やリコールリスクを大幅に低減。
高真空や放射線耐性など高度な環境試験設備を完備。過酷な環境での長期安定稼働を実証し、製品トラブルや交換の手間を大幅低減。
独立系商社の世界規模のネットワークで部材を計画調達し、市況変動に左右されない安定した生産・供給体制の構築に貢献。
部品不足時にもグローバルな情報網で代替品を迅速に提案し、部品欠品によるライン停止と販売機会の損失を抑制。
単なる手配にとどまらず、商社特有の柔軟な組み合わせ力で「ないものは創る」提案を行い、調達の課題を解決。
14カ国約50拠点(※1)の工場網を利用し、設備投資リスクを負うことなく需要地に近い現地生産や海外への生産移管を実現。
複数拠点の供給網により、有事には他工場へ速やかに生産を移管でき、顧客へ強固で安定した製品供給(BCP対応)を実現。
全製造拠点で技術や品質のグローバルマネジメントを徹底し、どの国で作ってもばらつきのない均質な品質管理をアピール可能。